第25章 光
どうして。
どうして、そんな顔をするの。
あなたはいつも前だけ見ていて。
追いかけるあたしを振り向いてもくれなくて。
なのに。
「ロー…?」
小声で問いかけると、ローはほんの僅かに目を細めた。
とろりとした金色の瞳の奥に、一瞬、激しい感情が垣間見えた気がした。普段の彼とは違う、切実な温度を孕んだ視線に絡めとられて、思考が止まる。
腕を握る力は決して強くはないのに、どうしてだか振り解くことができなかった。硬い指先から、向けられた視線から、微かな、だけど逃れられない熱が、じわじわとあたしを侵食していく。
「アウラ」
低く言い聞かせるような声音が心地よく耳に届く。その声を聞くと、ざわめいた気持ちが少しずつ静まっていく気がした。
迷子が帰る場所を見つけたような、悪い夢から醒めたような───心の奥で小さな灯火がふわりと熱を宿す。
だんだんと呼吸が落ち着きを取り戻し、冷え切っていた肌の下で、温かい血が通いだすのが分かった。焦りと不安でいっぱいだった心が、ゆっくりと別の感情で上書きされていく。
視界を占めるローの端正な輪郭。
遮るもののない至近距離。
そして、あたしの腕を掴む手のひらの熱。
「……ロー…?」
だんだん速くなる脈拍が、目の前の人の存在を強く意識させてくる。
あたしの様子が変わったのが伝わったのか、ややあってローは息を吐いた。そして、罪悪感を押し隠すように、美しく均衡の取れた双眸が少し伏せられる。
「…悪い。少しだけ大人しくしていてくれ」
「………え?」
つぶやいたと思ったら。
「っ……」
心臓がどくんと、一際大きく跳ねた。
軽く腕を引かれて。
一瞬で詰められる距離。
視界いっぱいがローで埋め尽くされる。背中にまわった硬く大きな腕と体温で彼の存在を強く意識して、思考が止まる。
密着する体が。耳にかかる吐息が。
現実であることを生々しく伝えてくる。
心臓が激しく脈を刻み、一気に体が熱くなった。
ローは壊れ物に触れるように、存在を確かめるようにあたしを抱きしめた。
「お前を失うのだけは…耐えられねェ」
そして、苦しげに掠れた声が、耳元で聞こえた瞬間。