第25章 光
ひどい人だ。
あたしにこんなものをつけて。
温もりすら消え去った虚無の空間を見つめながら、あたしはぼんやりと思う。手首には、冷徹な拘束具が依然存在感を放っていた。
ひどい人だと思う。
だけど、ローがなぜこんなことをしたのか分からないほど、あたしも馬鹿じゃない。
彼のことだから、いろんな可能性を考えて──これから起こり得るあらゆる事態を想定して。
その上で、こうするしかないと判断したんだろう。
首を絞められた時、一瞬すべてを諦めかけたのも事実だった。あの人が真に求めているものを理解して、あたしは決してそれになれないことに気づいた。あたしを殺すことで気が晴れるなら、それでいいかとすらと思った。
今思うと信じられないことを考えていた自分に寒気を覚える。
あの時ローの声が聞こえなければ。
約束を思い出さなければ。
あたしは抵抗することもなく命を投げ出していたかもしれなかった。
それなのに今は──。
どうしてだか、逆に抗ってしまったことに後悔をしている…。
…あたしがこんな状態だからだ。
情緒が不安定すぎて自分でも恐ろしくなる。
だから、置いていくしかなかったんだ。
頭では分かってる。分かってるんだけど。
「…なんでよ、ロー」
あたしはその場に体を丸めて蹲った。震えないように強く握り合わせた両手を胸に当てて、溢れ出しそうになる感情を堪える。
自由を追い求める彼に似つかわしく無い白い拘束具。
まただ。
また、彼は去り、あたしだけとり残された。
彼が島を離れたあの時と同じように。
追いかけることは許されない。
この事実が全てだった。
──これが、ローの答えだったのだ。