第53章 恐怖を讃えるコラール【渋谷事変】
『一秒やる。どけ』
四つの眼がジロリと睨んできて、漏瑚は反射的に飛び退き、距離をとる。心臓は壊れたのかと思うほど暴れていた。
これが、宿儺……!
五条 悟とは異質の強さ!
圧倒的 邪悪!
互いの一挙手一投足の全てが死因に成りうる恐怖!
自分の顎を掴む漏瑚の腕の先を消し炭にしながら、虎杖――否、宿儺が立ち上がり、煩わしそうに前髪をかき上げる。
呼吸をすることすら罪なのではないかと錯覚するほどの気迫に、身体の震えが止まらない。
『――頭が高いな』
ため息とともに吐き出された言葉に、漏瑚は無意識に片膝をついていた。
なんだ、身体が勝手に――……。
隣では、双子が互いに身を寄せ合い、ガタガタと恐怖に震えながら土下座するように頭を下げる。
不意にキンッと額の先が斬られ、バツンッとトイレの壁に亀裂が走った。ドクドクととめどなく流れる血に身も凍るほどの恐怖が募る。
『片膝で足りると思ったか? 実るほどなんとやら、だ。よほど頭が軽いと見える』
そして、宿儺は視線を双子に移動させ、ポケットに手を入れて見下ろした。
『ガキ共、まずはオマエらだ。オレに何か話があるのだろう。指一本分くらいは聞いてやる。言ってみろ』
* * *