第53章 恐怖を讃えるコラール【渋谷事変】
『そうか。死ね』
とっさに明るい髪色の少女が黒髪の少女の肩を抱き寄せ、四角い板のような機械を翳してくる。それに構わず炎を生み出し、双子の少女は悲鳴を上げながら呑み込まれた。
二人を確認することなく、漏瑚は虎杖を見下ろす。
よし、紋様は薄いがまだ消えていない。不測の事態だが、最大限利用させてもらおう。
夏油が言っていた。虎杖 悠仁は指をニ十本全て取り込んでも、肉体の主導権を宿儺に譲らないだろう、と。
だが、それは例えば、一日一本、二十日間かけて取り込んだ場合の話だ。一度に十本も指を取り込めば適応が追いつかず、一時的だが肉体の主導権は宿儺に移る。
漏瑚は呪符を貼って封印した巻物を取り出した。それを広げると、ミイラ化した人間の指が十本 張りつけられている。
『起きろ、宿儺!』
虎杖の口を無理やりこじ開け、一本ずつ嚥下させた。一本、二本、三本……やがて、十本の指全てを取り込ませる。
これで、虎杖の中には最低でも十五本の指がある。
緊張した面持ちで虎杖を見ていると、背後からゲホッと咳込む音が耳に届いた。そこでは、燃やしたはずの双子が荒い呼吸を上げて立っている。
『生きておったか』
火傷も見られない。どちらかの術式だろうな。だが、この怯えよう……そう何度も防げないだろう。
『手間をかけさせるな』
少女たちへ腕を持ち上げて、思わず息を呑んだ。腕の先が切断されている。少女たちも言葉を失くしていた。