第53章 恐怖を讃えるコラール【渋谷事変】
――オマエの無念は俺が晴らしてやる。
塵と化した陀艮を握りしめ、漏瑚はスーツの男を燃やした。次いで、眼鏡の女。隻腕の老人を燃やそうとしたが、近づいたときにはすでに後方へ逃げられていた。
――速い。
――禪院 直毘人。【投射呪法】により、『最速の術師』と呼ばれるに至った。だが それも、右腕があったときの話……。
漏瑚は老人の四方に火山の噴射口を呼び出す。そこから炎が噴き出し、逃げる間もなく老人を呑み込んだ。
「…………」
大した感慨もなく、漏瑚はトドメを刺すべく老人の頭を掴む――と、ゾワッと背筋が粟立つ。
宿儺……⁉ いや、違う。指だ!
【宿儺の指】が、渋谷のどこかで解放された!
漏瑚は気配を辿り、男子トイレへと駆け込む。
そこには、夏油が連れていた双子の少女が、倒れた虎杖の前にしゃがみこんでいた。虎杖の顔には紋様が浮かんでいたが、間もなくスゥと薄くなる。
二人が何をやっていたのかをすぐに察し、漏瑚は低く舌打ちをした。
『貴様ら! 指を何本喰わせた⁉』
「い……言わない!」
立ち上がった黒髪の少女が、ぬいぐるみを抱きしめ、怯えたように一歩 下がる。その少女に、明るい髪色の少女が「美々子!」と呼んだ。
答える気はない、か。