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夢幻泡影【呪術廻戦/伏黒 恵オチ】

第53章 恐怖を讃えるコラール【渋谷事変】


「ねぇ、夏油さま。五条 悟って何者? 超強いんでしょ?」

 ビルの屋上の穏やかな昼下がり。夏油の長い髪を梳かしながら戯れに菜々子は尋ねた。夏油の座る椅子に背を預け、美々子は うつらうつら している。

「親友だったんだ。ケンカしちゃって それっきり」

 困ったように眉を下げ、夏油が笑みを浮かべた。


 ――大好き。


 ――大好き。


 ――大好き。


 地獄のような毎日から助けてくれた恩人。けれど、菜々子たちにとっては、すでにそれ以上の存在だった。

 神――そう言っても過言ではない。
 世界と同義で、行動指針で、生きる理由そのもの。

 夏油を殺した五条を自分たちは一生 許さない。けれど、これでいい とも思っていた。


 ――だって、五条 悟は夏油さまのたった一人の親友だから……。


 だが、“オマエは違う”。


 夏油を乗っ取った得体の知れない存在。

 どれだけ姿形が同じでも、声を真似ようと、仕草を似せても――あんなのは夏油ではない。

 同じじゃない。“同じなわけがない”。

 それなのに……分かっているはずなのに、一緒に理想の世界を目指していた仲間――夏油の秘書のような立場にあった菅田 真奈美と顔に傷を持つ呪詛師・祢木 利久は偽物の夏油に協力すると言い始めた。

 目的も正体も定かではないが、五条が封印されて行動不能になれば世の中は渾沌に堕ち、非術師たちは大勢死ぬことになる。強くなければ生き残ることは不可能。

 非術師は淘汰されていき、術師が増え、呪霊は消えていく――夏油の望んだ理想の世界が実現する。


 ――夏油の遺志を継ぐ。


 まるで高潔な志を語るように言う仲間に、菜々子はブチ切れた。

 だから協力する?
 夏油のフリをした得体の知れない男に?

 大好きな人の身体をゾンビみたいに弄ばれているのだ。黙っていられるわけがない。
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