第53章 恐怖を讃えるコラール【渋谷事変】
「は……?」
思わず目を丸くする伏黒だったが、我に返るのは詞織の方が幾分 早かった。
「か……っ! 【風はやみ 雲のひとむら 峰こえて 山みえそむる 夕立のあと】‼」
いつもとは違う、早口でまくし立てるような詞織の和歌が耳に届く。
雨上がりの後のような湿った匂いが鼻を掠め、風が衝撃を緩和し、伏黒と詞織は叩きつけられることなく地面に降り立った。
「メグ、怪我は?」
「ない」
礼を言う暇などなかった。
速いなんてものではない。いつの間にか外へ出されていた。
前に少年院で宿儺と戦ったが、そのときと同レベル。
何なんだ、コイツは……⁉︎
無意識に詞織を背に庇い、伏黒は警戒しながら一歩前へ出た。
* * *