第52章 波打つグルーヴ【渋谷事変】
「メカ丸君のもたらした情報を総合すると、彼の言う通り、渋谷の隣駅から攻めるのが効率的です。合流した虎杖君、それと伏黒君と詞織さんには、猪野君と一緒に“術師を入れない【帳】”を解くよう動いてもらっています。先ほど 【帳】が上がっていたので、上手くいったのでしょう」
一仕事を終えたのだ。四人はそのまま渋谷駅へ向かっているだろう。無茶をしていなければいいが。
話の合間に聞いたが、伊地知は星良の治療を受けて一命を取り留め、釘崎や順平たちともここへ来る途中で会ったらしい。
呪詛師の襲撃を受けていたが、運良く七海が通りかかり、退けたのだそうだ。
七海の話に、真希はホッと安堵の息を吐いた。
そこへ、ずっと黙っていた直毘人が「それにしても」と髭を撫でる。
「五条 悟が封印か……狐に摘まれたようだ」
「私もです。ただ、偽物とはいえ夏油さんが絡んでいる。その辺りに種があるのかと」
夏油……その名前に、真希は反射的に渋い表情をした。
去年の【新宿・京都 百鬼夜行】で会ったのを覚えている。袈裟姿の長身の男。手も足も出ずに敗北を喫したことは忘れられない。
「俺としては、このまま五条家の衰退を肴に一杯……フフフ……」
「やる気がないなら帰れよ」
一口に御三家といっても、この三家の仲は最悪だ。特に、現代最強の術師が当主を務める五条家の権力は計り知れず、他の二家――加茂家、禪院家にとっては目の上の たんこぶ だろう。
だが、五条 悟が呪術界、ひいては現代社会に必要不可欠な存在というのもまた事実だ。
そこへ、「帰れ、か」と直毘人はジロリと真希を見る。