第55章 永久を願うコン・アモーレ【渋谷事変】
「……お願い……っ!」
他人の呪力を使っての【反転術式】など前代未聞だろう。星良も普段と勝手が違うはずだ。
それでも……。
時間をかけて薄皮一枚を【復元】し、不完全ながらも火傷を治癒していく。やがて、星良は術式を解いた。
「はぁ……はぁ……」
ほっそりとした指先でケロイドの広がる七海の左頬に触れ、彼女は悲しそうに顔を歪ませると、そこに額を当てる。そして、彼の右腕がピクリと動き、星良の頭を撫でた。
「……星良さん……どうしたんですか……珍しいですね。そんな顔をして……」
「誰のせいだと……無茶の域を越えてます……! 本当に……っ! 大変、だったんですから……っ! 七海さん……っ‼︎」
声を上げてしゃくりあげ、縋る星良を抱き止める七海が灰原を見上げる。
「……灰原……」
「七海、生きてるかー?」
高専二年の死にかけたときと同じ調子で、おどけたように笑った。その目尻から一筋の涙が伝う。
「えぇ、おかげさまで。ありがとうございました」
七海の声に、言葉に、灰原も鼻をすすった。彼が生きている実感が徐々に追いつき、込み上げてくる熱い感情を堪えることができず、涙が次から次へと溢れ出す。
「全く……心配かけすぎだよ、バカ七海」
「君にバカと言われたくありませんよ」
軽口の応酬ができる。それがこんなに幸せなことだったのだと、灰原は改めてその現実を噛み締めた。
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