第51章 モレンドに敬意を表して【渋谷事変】
メカ丸が破壊され、連絡手段を失った虎杖だったが、頭は極めて冷静だった。
あの血の玉――【百斂】が解けた。
どういう理屈は分からない。そんなものを聞く余裕はなかったが、メカ丸の狙いが当たったのだろう。
それでも、これだけは分かる。
――自分の土俵に持ち込むことができたのだと。
「――【赫鱗躍動(せきりんやくどう)・載(さい)】」
ズズッ…と、男――脹相の顔に紋様が浮かんだ。先ほど浮かんでいた紋様と違い、先端が鋭く尖っている。
虎杖は腰を低く落とし、脹相を見据えた。ジャリ、と細かな瓦礫を踏む音がやけに耳に届く。
ザァァァ…と水浸しのトイレの中で、二人は互いにタイミングを見計い、同時に動いた。パンッと虎杖と脹相の拳が交わる。それを合図にひたすら拳を振るった。互いの拳が互いに入り、仕切り直して殴りつけた拳は防がれる。
脹相の拳が顔面を殴りつけるが、虎杖も負けてはいなかった。虎杖の鋭い蹴りが脹相の顔面を蹴り上げる。
近距離に持ち込んだ分、先ほどよりもずっと戦(や)りやすい。
――勝てる!
このまま押し切ってやる。
虎杖が勝利を確信したとき、虎杖の腹部を“何か”が貫いた。