第51章 モレンドに敬意を表して【渋谷事変】
「……まだ虎杖と一緒か?」
突然 伏黒に問われ、一拍置き、与は首を振った。
「虎杖は渋谷駅で特級呪物【呪胎九相図】の受肉体と戦っている。俺は途中で傀儡を破壊されたから、アイツは今 一人だ」
そう、と詞織が小さく呟く。
「……裏切りの話を聞いたとき、あなたのことキライだと思った。でも、目を見たら分かる。あなたは悪い人じゃない」
そこで言葉を区切り、彼女はふわりと笑んだ。
「ユージを助けてくれて、ありがとう」
それは、『可憐』という言葉がピッタリと合う、そんな笑みだった。先ほどまでの淡々とした無表情が綻び、まるで花が開くような表情に与は思わず目を見開く。
だが、礼を言われる資格など、自分にはない。
「俺にやれることはやる。それが償いになるとは思わないが……」
「しでかしたことは変わらない」
そう言って、伏黒がこちらに背を向ける。そして、「だが」と続けた。
「これからのことはオマエ次第だ。行くぞ、詞織」
「ん」
伏黒が詞織を連れて行く。おそらく、渋谷駅に向かったのだろう。入れ替わるように夜蛾がやって来た。
「与、オマエの傀儡が到着した」
三体の傀儡を見下ろし、与は呪力を流す。傀儡たちと感覚を共有すると、三体の傀儡が身を起こし、立ち上がった。
「頼んだぞ」
これからのことは自分次第。確かに、伏黒の言う通りだ。
償いはする。この渋谷の件が片づいた後に。
皆に許してもらえる、その日まで。
夜蛾に力強く頷き、与は傀儡を【帳】へ向かわせた。
* * *