第51章 モレンドに敬意を表して【渋谷事変】
「星良だけじゃ【帳】の中の術師や補助監督の治療に手が回らなくなってきてる。いざというときにアイツが【反転術式】を使えなくて困るのはあたしたちじゃない」
死ぬかもしれない人間と、星良自身だ。
「分かった。すぐに手配しよう」
「与、オマエはまず灰原に折り紙 届けろ。それと、一体は召集をかけた術師の援護。他 二体は星良の指示に従って動かせ」
あと、と続ける。
「星良に伝えろ。【反転術式】は容体を安定させるために使え。傷を塞いで動かせるようになったら、すぐあたしのところに連れてこい。温存できるところは温存しろ」
コクリと頷くのと同時に、新たな人物が現れた。
「ショーコさん、助けて!」
あれは、東京校の神ノ原 詞織か。後ろにいるのは同じく伏黒 恵。東京校の天才組である。二人は伏黒の【鵺】に男を乗せてやってきた。
「猪野か。誰にやられた……は別にいいな。聞いても仕方がない」
伏黒が【鵺】から猪野と呼ばれた男を下ろすと、家入はすぐに容体を確認する。
「【反転術式】を使ったのか。上出来だ。これなら、あたしがやるまでもない」
指示を出すべく家入がこの場を離れると、不意に視線を感じた。
「……あなた、メカ丸でしょ」
「オマエが……?」
詞織と伏黒の視線に居心地の悪さを感じるも、誤魔化す理由もなく、「そうだ」と短く返す。
この二人は渋谷で自分のことを「信用できない」と言っていた。当然だろう。