第51章 モレンドに敬意を表して【渋谷事変】
「さすが特級。治りが早いね」
そこへ、パァンッと烏が突撃し、疱瘡神を貫く。そして、一度 ビクッと身体を痙攣させて地面に伏せると、そのまま絶命した。
術師にとって最も簡単に能力を底上げする方法――それは命を懸けた“縛り”。
冥冥の術式【黒烏操術】、その真骨頂――【神風(バードストライク)】。
烏に自死を強制させ、その代償として本来 微弱である烏(動物)の呪力制限を消し去り、相手へ体当たりさせる。
この【神風(バードストライク)】を防ぐことができた人間は、五条 悟を除いて存在しない。
疱瘡神を祓ったことにより、【領域展開】が解除され、駅の線路の景色が戻ってくる。トンネルの奥からは気味の悪い奇声が響いてきていた。
「さぁ、本丸だよ」
バサバサッと羽音を立てて烏が集まってくる。その烏たちを撫で、冥冥は斧を構えた。
「皆――……“私のために死んでくれるかい”?」
冥冥の視線の先で、長い身体を持つ呪霊を連れた夏油がこちらを見てくる。
「やるじゃないか。最近の術師にしては」
その笑みは胡散臭さが感じられる、冥冥のよく知る夏油のものだった。
* * *