第51章 モレンドに敬意を表して【渋谷事変】
「姉さま!」
気がつけば腕の身動きすらままならない狭い場所に閉じ込められる。形状からして棺桶といったところか。
――【墓】
冥冥が閉じ込められた棺桶の頭上から墓石が落下し、ドゴッと棺桶ごと土に埋まる。
――【3、2――……】
冥冥はすぐさま狭い棺桶の壁に斧の刃を立て、グッと呪力を込めて破壊した。ピシッと墓石に亀裂が入り、冥冥は斧で打ち砕く。
「幾年ぶりかな。私の命に指がかかるのは」
「姉っ、さま……っ!」
顔を紅潮させて興奮する弟を可愛く思いながら、冥冥は疱瘡神へ視線を向けた。
再び棺桶に閉じ込められ、頭上から墓石……棺桶を砕くも、また閉じ込められ、を繰り返す。疱瘡神へ斧を振り下ろそうとするも、再び棺桶に閉じ込められてしまった。
「ふむ」
なるほど。
まず棺桶に拘束、墓石で埋葬、三カウント開始――ここまでが領域の必中効果。
――疱瘡神は特定疾病呪霊だ。
特定疾病呪霊は、疫病などの特定の病気に対する恐怖から生まれた呪霊だ。疱瘡神は、非常に強い感染力と高い死亡率を持つ天然痘(てんねんとう)ウイルスが由来。
夏油がした術式開示の観点からこの情報に嘘はないだろう。
三カウント以内に棺桶から脱出できなければ、自分は疱瘡に罹り、死ぬ。
厄介なのはこの墓石。あと二回も食らえば、いつものような動きはできなくなるだろう。
コイツを祓って疲弊した状態で夏油(仮)と戦いたくはない。