第51章 モレンドに敬意を表して【渋谷事変】
「じゃ、殺すね。話して時間を潰したかっただけだし」
えぇ⁉ そうなの⁉
高く振り上げられた大斧に、男は顔を青くし、線路に手と額をつけて土下座をした。
「すみませんでした! もう悪さはしません! だから命……命だけは‼」
呪詛師として多くの命を奪ってきた。しかし、それと自分の命が奪われるのは別の話だ。
人様の命を奪っておきながら自分が死ぬのは怖いのかと嗤われたっていい。
当たり前だ! 怖いに決まっている‼
人を殺しても、自分が殺されることなど考えていないのだから‼
すると、冥冥が「憂憂」と弟を呼ぶ。
「命の価値、命の重さは何に比例すると思う?」
「もちろん! どれだけ姉さまにとって利用価値があるかです‼」
コイツ、満面の笑みで答えやがった。しかも即答。
「ふふ……ありがとう。君は?」
「えっ⁉ 俺は……えーっと……」
まさか自分に質問がくると思っておらずしどろもどろになってしまう。
なに、これ。何を求められているんだ?
ぐるぐると取り留めのない思考の中で冥冥の斧が迫る。
「命を狩る者がその天秤を即答できない。そんなだから負けるんだよ。ちなみに私にとって、用益潜在力(財産価値がなくても収益が期待できる力)そのものが命♡」
命の天秤――それを答えることができず、男は何の言葉を残すこともできないまま、絶命した――……。
* * *