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夢幻泡影【呪術廻戦/伏黒 恵オチ】

第51章 モレンドに敬意を表して【渋谷事変】


 ――22:02
   東京メトロ 明治神宮前~渋谷 間


 自分の連れて来た式神はぐったりとしており、その背中ではうっとりと頬杖をして少年がこちらを見ていた。

 冥冥がいつも連れている弟の憂憂ということは知っている。だが、憂憂が見ているのは、正確には自分ではなく、姉の冥冥の戦いぶりである。

「知ってるよね? 私の術式――烏を操る、それだけだよ。弱いよね」

 わずかに意識が逸れたところに冥冥の大斧が横薙ぎにされ、男は「おわっ」とのけ反って避けた。

 危ない……確実に首を狙った攻撃だった。一瞬でも避けるのが遅れていたら、首は胴とサヨナラをしていたところだ。

「だから、若い頃は必死に鍛えたよ。術式なしでも戦えるようにね。無駄じゃなかった。こうして君を圧倒しているとそう思える」

 やばい。めちゃくちゃ強い。

 自分も腕に自信があったし、冥冥の言う通り、事前に彼女の術式【黒鳥操術】についても知っていた。烏を操るという戦闘向きとは思えない術式と女だということで侮っていたのだ。

 ここまでの戦いも一方的で、手も足も出なかった。

「や……やめろ! 俺はもうこの件から手を引く。だから助――……」

「静かに。まだ姉さまの話の途中です」

 憂憂が口元に人差し指を立て、黙るように言ってくる。

 マジか。この話 聞かなきゃいけないの?

「自分に言い聞かせた。術師の真価は術式ではないと。でもね、限界がきたんだ」

 身体能力も呪力による肉体強化も延々と向上するわけではない。

 冥冥は挫けた。挫けたからこそ……。

「……再び自らの術式と向き合うことで、私は一級術師として花開いたのさ」

 瞬間――冥冥の話に感動を覚えたのか。憂憂の大喝采がトンネルに激しく反響し、思わずビクッと反応してしまった。

「拍手を」

 くそっ、何でこんなガキの言うことを聞かなければいけないんだ。

 だが、この場の異様な空気に逆らうことができず、男は小さく手を叩く。
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