第50章 止まらずに進むセグエンテ【渋谷事変】
「させねぇよ!」
ようやく痛みで麻痺していた身体が動くようになった。ピクピクッと手を震わせる剣に口角を上げる。
「空気 読めよぉ!」
悲鳴のような声を上げる男の首を七海は掴み上げた。
「補助監督を殺してまわっているようですね。私もここに来るまで、何人もの遺体を見ました。あなたですね?」
ギュッと怒りで固く握られた拳が、うねるように殺意と呪力を纏う。
「くっ……ははっ」
恐怖に引きつった笑みを浮かべたのも束の間――男の顔はすぐさま顔を歪めて口を開いた。
「ご、ごめんなさ――……」
最後まで言葉を待つことなく、七海の拳が男を吹き飛ばす。男の身体は壁を突き破り、隣の建物へ激突した。
呪力で強化した打撃なのか、それとも術式を使っているのか。
男を行動不能にしたのがどちらか分からないが、それでも……レベルが違いすぎだ。
何となく順平へ視線を向けるも、自分と同じように目を見開いて固まっている。
これが―― 一級術師!
自分の見た光景が信じられず、釘崎は返事もできずにゴクリと息を呑んでいると、七海がぐるりと首を巡らせながら釘崎や順平を見た。そして、順平の方へ駆け寄る。
おそらく、順平の背後に負傷した新田を見つけたからだろう。釘崎もそちらへ向かった。
「どうやら無事のようですね。釘崎さんは?」
「このくらいカスリ傷よ」
まだ少しふらつくが、強がりくらい言わせてほしい。