第50章 止まらずに進むセグエンテ【渋谷事変】
「君もそう思わない?」
「うぁっ⁉」
ザクッと男が【澱月】を刺した。その剣は【澱月】ごと順平の肩を貫く。
「吉野!」
そうか。【澱月】に打撃は効かないが、斬撃は効く。
「やめろ‼」
「やめさせてよぉ~。俺にこれ以上 罪をキャッ! 噛んじゃった」
おちょくるように言う男に苛立ちが募り、釘崎はググッ…と足に力を入れて立ち上がった。
順平は無事だ。肩を刺されただけ。意識もあるし、術式も継続できている。戦闘を続けられないほど重傷でもない。
傷が深いのは新田の方だ。刺されて動けず、意識はあるが呼吸は浅い。
んっ、んっ、と咳払いをする男を前に、とにかく足に力を入れる。
「フラッフラじゃん」
知るか、そんなもの。
釘崎が金槌を振り上げ、同時に男も剣を振りかざす。
そこへ、カシャンッとガラスの割れる音が響いた。動きを止めた釘崎たちの耳に、ガラスを踏みしめる音と共に足音がこちらに近づいてくる。
「いいんだっけ? 黒じゃないスーツも殺して」
あれは……伏黒や詞織と同じ班にいた術師だ。
「七海さん……?」
血が流れる肩を押さえて呆然と名前を呼ぶ順平に答えず、七海は無言でネクタイを手に巻いていた。
ギュッと深く寄せられた眉には怒りが滲み、少し離れた位置にいるのに、ここからでもビリビリと殺気が伝わってくる。
躊躇いなく向かってくる七海に、男は笑った。
「いやいや、状況 見てよ! 何 勝手に動いてんの? こっちには人質が……アレ?」
男の剣が空を切る。【澱月】が新田を抱え、順平はすでに男と距離を取り、後退していた。
「逃げちゃった」
残念そうな顔をする男の背後に七海が立つ。