第50章 止まらずに進むセグエンテ【渋谷事変】
「ねぇ、立てない? ねぇってば」
揶揄うように言ってくる男が鬱陶しい。今すぐにでも金槌を顔面にぶち込んでやりたいのに。
「君さ、前に会ったときよりすごく強くなったでしょ。俺、最初 気づかなかったもん。クラゲの君も、なかなかやるね」
でもさぁ、と男が歪んだ笑みを浮かべる。
「ただ強いだけで勝てる世界じゃないんだよ。特に、俺の術式が絡むとね。つっても、俺も俺の術式のこと、よく分かってないんだけど」
手をついて戻ってくる剣に「おかえり」と言って男はその“手”を取った。
「さて、誰から殺そうかな」
口を動かせ。
身体が動かせるようになるまで時間を稼がなければ。
「テメェらは何がしてぇんだよ」
「あぁ、なんか五条 悟を封印したいんだって」
「五条先生を封印⁉」
順平が動揺から叫ぶ。だが、動揺しているのは釘崎も同じだった。
渋谷で一般人が五条を呼んでいると聞いていたが、まんまと誘われたわけか。
だが、どんな作戦を立てているか知らないが、そんなことできるわけがない。
五条 悟は現代最強の呪術師だ。
「テメェに聞いてんだよ!」
「あっ、俺?」
動揺を悟られないよう、釘崎は問いを重ねる。
「サッカーが大好きで大得意の人がさ、サッカーのない世界に生まれたらどうするかな? ……ダメだ、上手く言えないなぁ。っていうか、理由ってそんなに大事?」
――いいじゃん、いいじゃん! 楽しいじゃん!
「俺が楽しければそれでいいじゃん‼」
顔を歪め、心の底から自己中心的に笑う。
これほど醜い笑顔を自分は知らない。
なんなんだよ、コイツ。言っていることが意味不明。頭がおかしいとか、イカレているとか、そんなレベルではない。
くだらないことで他人を傷つけるヤツは大勢いるが、コイツはその中でも最底辺の部類だ。