第50章 止まらずに進むセグエンテ【渋谷事変】
「ねぇ……その触手、毒とかあったり?」
「さぁ、どうかな? 試してみる?」
いくよ、と順平が【澱月】に声をかけ、警棒型の呪具を持って迫った。打ち出された呪具も、【澱月】の触手も紙一重で避けられる。
釘崎も金槌を男に振りかぶるが、それも「危なっ!」と避けられてしまった。そこで不意に男と目が合う。
「あ、君。前に会ったね」
「どちら様ですか⁉︎」
交流会だろ、と思ったが意味もなく すっとぼけてやった。
そこへ、男がニヤつき、「アレェ?」と口角を上げる。
「なんだ、隠れたんじゃなかったの」
何の話だ、と眉を寄せるのと同時に、新田のことを言っているのだと気づく。だが、気づいたときには男が身を翻していた。
「待て!」
「待ちなさい!」
釘崎は急いで順平とBunkamuraの中へと入る。男を追いかけた先には、血を流して倒れた新田がいた。そんな新田の元までいき、男が新田を蹴飛ばす。
「新田ちゃん⁉」
「【澱月】、行け‼」
順平の命令に【澱月】が駆け出し、吹き飛ばされた新田を受け止めた。
「テメェ!」
釘崎は金槌を手に男へ迫る。そこへ、頭上から男の手に剣が下りてきた。まるで手を繋ぐようにして握られた剣に、釘崎は思わず面食らう。
なんだ? 先ほど手放したはずの剣がなぜ上から……。
一瞬の隙に刃が釘崎の足を掠める。
浅い……そう思ったときには、頬に拳が入っていた。男の剣の柄の拳だ。グッと足を踏ん張るも、しっかり顎に入り、グラグラとする頭を抱えて膝を折る。
「おっ、顎に入った? 立てない?」
男がニヤニヤとこちらを見てくるが、動けない。順平が「釘崎さん!」と名前を呼ぶが答えることもできなかった。
順平は駆け寄ろうとするも、男を警戒して新田の前から動けないようだ。