第1章 生きてるだけで【煉獄杏寿郎】
(あれ、やっぱりおかしい)
唄羽はずっと違和感を抱いていた。
(私は、列車に乗っていた、…子どもも生まれていない…これはもしかして血鬼術…)
そう気づいた瞬間、台所に落ちていた包丁で自分を刺した。
その瞬間
「…っ!!!!???」
夢から、覚めた。
車内は鬼の肉に覆われていた。
誰かが刀を振るう音が聞こえる。
「杏寿郎…!」
そう呟き、席を立とうとした瞬間車体が大きく傾く。
誰かが、鬼の首を切ったようだ、だが、
(このままだと横転して全員死んでしまう…!!!)
だが、思っていた衝撃はこない。
無意識に杏寿郎が助けてくれたのだと感じる。
周りの人を起こし、避難させ、自分も車両の外へ出る。
その、瞬間
ズン…ッと今までに感じたことのない空気と気配を感じた。
(鬼が、来ている…それもとんでもなく強い鬼が、)
急いで杏寿郎の元へ向かう。
そしてそこで見たのはあり得ない次元での戦いだった。
「上弦の、三…どうして、」
思わず立ち尽くす唄羽に地面に倒れたままの炭次郎が声をかける。
「あの、貴方は煉獄さんの…」
あの時、杏寿郎に連れていかれ、妻だと言うところまでは説明したが、鬼殺隊であったことは伝えていないから、この状態に叫び出さないことに疑問を感じたのだろう。
「…」
しかし、唄羽は呼びかけに全く反応しない。
その様子を見ていた炭次郎はあることに気づく。
(この人、煉獄さんとあの鬼の動きを追えている…!?どうして…)
そう、唄羽は2人の動きをひたすらに追っていた。
もし万が一があれば、自分が身を挺してでも彼を守ろうとしていた。
だが、状況は徐々に悪化していく。
「お前も鬼になれ!!!杏寿郎!!!」
「俺は鬼にはならない!!!老いるからこそ、死ぬからこそ、愛おしいのだ!!!俺には守るべきものが、愛する人がいるんだ!!!!」
そう言うと2人の攻防はどんどん加速していく。
目も、骨も、内臓もボロボロになりながら闘う杏寿郎を見て、胸が張り裂けそうになる。
お願いだから、頼むから、そう、思っていたのに