第1章 生きてるだけで【煉獄杏寿郎】
彼らの後をつけると、「うまい!うまい!」と大声で叫びながらお弁当を頬張る彼が、そこにいた。
私の気配に気がついたのか、ふと動きをとめた。
その動きに少年たちの動きも止まる。
「竈門少年たちは少し待っていておくれ」
そう言うやいなや手を引かれて後ろの車両に連れて行かれる。
「唄羽」
真剣な声で名前を呼ばれる。
「この列車は鬼が出ると言われいる。すでに何十人もの隊士が戻ってこないのだ。…可能であれば、この列車を降りてはくれぬか。勿論、鬼が出れば俺が倒すし、君を傷つけることは絶対にさせない。…だが、」
「…何かあったら怖い?」
「…ああ」
じっと私を見つめていた瞳が下を向く。
そんな杏寿郎の頬を手で包む。
「杏寿郎がいれば絶対に大丈夫よ。私も刀は持っていないけれど、柱だったんだから心配には及ばないわ。ね、大丈夫だから」
「…あい、わかった」
しょげているが、彼には圧倒的な強さがある。
鬼にだって屈しない強さがある。
だから大丈夫だと思っていたのに…。
気づけば、杏寿郎と子どもが家の庭で遊んでいた。
(あれ、子ども、もう生まれたんだっけ…?)
一瞬だけ生じた疑問だったが、目の前の幸せな景色を見ていると、そんなことどうでも良くなった。
どれくらいの時間が立っただろうか。
杏寿郎が目を覚ますと、車内が異様な状態になっていた。
鬼が車両と一体化したようで、どこを見ても鬼の肉がうじゃうじゃしていた。
「…よもや…」
ふと横を見ると愛しい妻の姿。
自分と同じで夢を見ているのだろう。
すやすやと寝息を立てている。
(…俺の妻はいつだって愛らしい)
ふっと微笑みそのまま竈門炭次郎の元へと向かい指示を出す。
彼らを信じ、ひたすら鬼の肉を切っていく。
(…唄羽は無事だろうか)
乗客全員を守ると言いながら、やはり一番に守りたい彼女の顔が浮かぶ。
彼女も、乗客も誰も死なせない、そう心に誓いながら。