第19章 観覧車
「いいや、ヒトというものは複雑で、そして愛しいものだと、キミが教えてくれたんだ」
そっと、頭を撫でられる。さっきまであんなに緊張して恥ずかしかったのに、なぜか今はとても落ち着く。心を優しさで包まれているような感覚だ。
「だから、グリーンにコイするキミも、シルバーをスキなキミも、キミは自分のキモチを否定しなくていいんだ」
「そっ、そんなの変だよ!」
勢いよく顔を上げてNを見つめると、Nは眉をわずかに上げた。
「なぜ?」
「うまく言えないけど、変でしょ?」
だって、それじゃあまるで、いいとこ取りで、八方美人で、優柔不断だ。
けれど、Nの回答はイエスでもノーでもなかった。
「そうやってキミは、誰かを傷つけることを恐れながらも、時がきたら選択をするだろう。今ボクの意見を否定したように、自分の意志で」
「どういう…こと?」
さっぱりわからない。観覧車で話したことのほとんどを理解できていない。
そんな私を、Nはまるで迷子を導くように、言葉を道標にする。
「キミのポケモンの声を聞いているからわかる……キミがどれだけ優しいヒトなのか。だから、自分の選択を信じればいい。誰かに言われたからじゃない、キミがどうしたいかはキミ自身が考えることなんだ…!」
「私自身が考える…」
「キミが感じたことはキミのものだ。それを否定する理由をボクは見つけられない…」
ゴンドラが地上へと戻ってきて、長いおしゃべりの時間も終わりを迎える。
「……どうやら、もうオシマイのようだ……ナナ、掴まって」
Nが先に降りて、私へと手を差し伸べる。
エスコートされているみたいで、少し照れながらもその手に導かれながら観覧車を降りた。