第19章 観覧車
密室での沈黙は時間の感覚が狂い、10秒にも感じたし1時間にも感じた。
どれぐらい経ったのだろう。
観覧車と共に時も止まってるんじゃないか?そんな奇妙な感覚を覚えたところで、
「……他の乗客は大丈夫だろうか」
「………え?ええっと」
ふとNがそんなことを聞いてきたので、Nの視線の後を追うように周りの乗客を見る。子供連れの家族や若い女の子たち、カップルらしきふたりも乗っている。停止中の観覧車に動じていない人もいれば、怖がる子供を宥める親もいたり、ゴンドラの中では様々な人間模様が繰り広げられていた。
「そうだねぇ、人それぞれだね。あそこのカップルは彼氏の方が怖がってるみたい」
「カップル……ボクたちはどう見えるのだろう」
「友達かな?でもNは歳上だし、背も高いから兄妹に見えてたりして」
「こんなに似ていないのに?」
「…っ、あははっ!たしかに…!ふ、ふふふ…!」
不覚にもツボに入ってしまった。どうしよう、笑うのが収まらない。
隣のNは、「なにがそんなにおかしいのかわからない」と言いたげに、頭の上に「?」を浮かべている。しばらく笑い止まない私を観察しながら、膝に肘をつき指の腹を合わせ、考え込むように指を絡めたり交差させて遊ばせた後、フッと目元を緩ませた。
「今のボクらなら、演じなくてもコイビトに見えるかもしれないね」
「ふ、ふふっ、くく…………え?」
「…ボクはキミの笑顔がスキだ。そうやってキミが笑うと、離れたあとも思い出して嬉しくなるんだ」
そんなことを言われれば、顔が勝手に熱くなる。恥ずかしげもなく、下心もなく言えてしまうNのまっすぐさがなんだか眩しかった。
「キミはボクに教えてくれただろう?コイは相手を考えるだけで嬉しくなったり辛くなると……そして、それを悩むのも楽しいと」
「たしかに言ったけど…」
「けれど…キミを想っても辛さはなく、ただただあたたかい。だからこれはコイとはまた違うものなんだろう」
「友達……だと思ってくれてるんだね。嬉しいよ」
「トモダチ……か」