第19章 観覧車
『緊急メンテナンスのため、一時運転を停止いたします』
アナウンスが響く。
「一時停止!?止まる前、変な音がしたから何かあったのかな?」
「強風の影響もあるかもしれない」
風でゴンドラがグラグラと揺れる。さすがに外れるなんてことはないと思うけど、空中で閉鎖的な空間に閉じ込められるというのは初めてだ。
少し身体を縮こませていると、Nが心配そうに声をかけてきた。
「怖いのかい?」
「ううん、平気」
「フフッ、キミもウソをつくんだね」
お見通しといった様子でクスリと微笑む。
「Nは怖くないの?」
「平気さ。万が一、ゴンドラが外れて落ちるなんてことがあればキミを助ける」
「うぅ…Nなら本当に助けてくれそうで心強いよ…」
なんて言ったものの、こうしてふたりきり、外界をシャットアウトした空間にいると、なんだか急にものすごく恥ずかしくなってきた。
密室で、互いの呼吸の音すら聞こえる距離なんて、イヤでも意識してしまう。
と、突然、ゴンドラが強風で激しく揺れた。
「ひい!?」
驚いた拍子に肩が跳ねると、それに合わせてゴンドラも揺れが強まる。
軽いパニックに陥ってワタワタしていると、Nが私の手を掴んだ。
「大丈夫だ、怖がらないで」
柔和な微笑みとあたたかな声。Nの優しさがスポンジみたいに心に染み込んでゆく。
Nと話すポケモンもこんな気持ちなのだろうか。
心拍数が徐々に落ち着きを取り戻す。
「ありがとう…騒いでごめんね」
「キミが落ち着いたのならよかった」
「動いたらそれだけ揺れも強くなるもんね。じっとしてないとだね」
自身に言い聞かせるようにそう言って、身体を椅子に固定させるように座り直した。