第18章 決戦、看病、そして一夜
翌朝、ドアが開く音に目が覚めた。けれど全身の倦怠感に目が開けられない。
歩く音。椅子を引く音。腰掛けて服が擦れる音。
たしか昨晩、椅子でナナが眠っていたはず。
(ということは、この音はナナか)
ナナがいたのはやはり夢じゃなかったようだ。
寝返りをうつと、なにかあたたかくて柔らかいものが手に触れた。
ゆっくりまぶたを開くと——
「う、うわぁっ!?」
炎症気味なのどを震わせて叫ぶ。あやうくベッドから落ちかけた。
「な…っ、なんで…!」
わなわなと狼狽える。
「オハヨウ。元気な目覚めだね」
椅子に座っているのはNだった。クスクスと笑っている。
急に叫んだせいで咳き込むオレを見て、Nは淹れたてのミントティーを差し出した。
ひと口飲めば、たちまちのどにスーッとした清涼感が抜けて咳が落ち着いた。
「…N、こいつを引きずり下ろせ」
「なぜ?肩を寄せ合ってシアワセそうに眠っていたのに」
「オレは許可してねえ!こいつが勝手に寝てたんだ!」
ぬるくなった氷枕を頭の下から引っ張って奪い返し、怒鳴りつける。
「おい、起きろよ!」
毛布を引き剥がすと、むにゃむにゃと寝ぼけながらナナは目を開けた。まぬけ顔を睨みつけていると、へらりと笑った。
「しるばーくん、おはよ…元気になった?」
「誰かさんのおかげでな」
皮肉を込めてそう言うと、ナナはようやく状況を理解したようだった。
「え……あれ?なんで私ここに…?」
キョロキョロと乱れたベッドを確認してから、なぜか被害者ヅラを決め込んで悲劇のヒロインを演じ始める。
「そんな…シルバーくん、どうして…!?」
「お前が勝手にベッドに入ってたんだろ!?」
「あ……そういえば寒くて起きてさ。寝ぼけて自分の部屋だと思ったかも…」
「アハハハッ!」
堪えきれないといった様子でNが声を上げて笑った。