第18章 決戦、看病、そして一夜
繋がった手を解いて頬に触れた。眠れるナナは、オレの手にそっと頬擦りする。
どんな夢見てんだか。大好きで大好きでたまらない幼馴染の夢だろうか。
熱で意識が朦朧とする中、押し込めていた感情が溢れ出す。
オレとナナしかいない、閉ざされた暗い部屋。
もはやこれすらも夢なのかもしれない。
だってこいつはNと帰っていったじゃねえか。
首を落とし眠るナナの肩を掴む。
「人のもんを取ったらドロボウ」なんて言ってたが、盗まれる場所に置いておく方だって悪いんだ。
止められなくなる前に警告はした。オレから距離も置いた。
それなのに、何度もノコノコとオレに近づくお前が悪い。
額にかかる前髪をかき分ければ、無防備な寝顔が目と鼻の先にあった。
熱に浮かされながら、そっとおでこを合わせる。抑えきれない衝動と、どうしようもない罪悪感が背中合わせに押し寄せる。
祭りの夜、奪おうとしてやめたのは、傷つけたくなかったし傷つきたくなかったから。
でも、もういい。もうどうにでもなれ。
どうせ、叶うわけがないのなら——
「…ん」
唇が触れかけて、ナナが小さく声を漏らした。
「起きたか?」
ナナは返事をしない。
寝言か。驚かせやがって。
思わぬ邪魔が入り、昂ぶっていた波が少し収まったところで、
「…どこにも、行かない…から…」
そう囁いて、眠ったままほのかに微笑んだ。
求めても決して手に入らない。なのに焦がれてしまう。
痛くて、辛くて、苦しい。出口の見えない感情。
お前と出会ったせいで、オレは知っちまった。
いらなかったのに、邪魔だと思っていたのに。
ひとりで強くなるって決めたのに。
なのに今は、何よりもお前を失いたくない。
みっともねえ。なんて無様なんだ。
それもこれもぜんぶお前のせいだ。
憎ったらしくてたまらないナナを一瞬腕の中に閉じ込めて。
近くにあったブランケットをかけてやり、そっと離れた。
「フン……奪うなら、正々堂々と奪ってやる」
テーブルに置かれていた水で喉を冷やして、再び眠りについた。