第18章 決戦、看病、そして一夜
「シルバーくん」
ナナは浴衣姿だった。あいつのために着付けをがんばったんだろう。祭りの景色の中、一際目立つ可憐な姿は、悔しいほどにきれいだった。
「向こうの屋台、一緒に見よ?」
「わかった、わかったから引っ張んなよ」
カランコロンと下駄を鳴らしながら、ナナは嬉しそうにオレの腕を引く。
だが、連れて来られたのは屋台じゃなく、人気のない暗闇だった。
「どこだここ?屋台じゃないのか?」
「嘘ついてごめん」
寂しげに微笑んでから、ナナはオレに抱きついてきた。
「急になにすんだよ!」
ナナはオレを見上げ、儚げに瞳を潤ませた。
「好きだよ、シルバーくん」
「……は?」
ありえない展開に、激しい動揺のあと、ゆっくりと感情の波が収まってゆく。
(なんだ…そういうことか…)
気づかなきゃよかったのに、気づいちまった。
これは夢だ。
自覚しちまえば、もうこの時間は終わりを迎える。
「ね、一緒に探そう」
夢の世界が崩れ落ちていく中、ナナの声が響いた。
なにを?
「私たちだけの答え」
なにを言ってる?そんなものはない。オレとお前はWPMが終わればもう関わることはない。
「それでいいの?」
ああ。
「本当に?」
いいって言ってんだろ。
「…わかった」
ナナがオレから離れる。ナナは泣いていた。
いつもいつもいつもいつも。夢でも現実でも泣きやがって。
その涙がオレをおかしくする。だから大嫌いだ。
お前の涙なんか、もう二度と見たくない。
涙を止めたくて抱きしめる。
けれどナナの身体は実体が無く、オレの腕からすり抜けてしまった。
「ばいばい」
まて。嫌だ。
本当は、オレは、お前のことが——
かげろうのように消えゆく姿に手を伸ばす。
お願いだ。
そばにいてくれ。
「行くな…!」