第18章 決戦、看病、そして一夜
フィルムノワールのようなモノクロの世界。
遠くに見えるのは、コートとハットに身を包んだ男の後ろ姿。
「オヤジ!」
背中を追いかけて叫んだ。
「行っちまうのかよ!あんな子供に負けただけで逃げるのか!」
「わたしはより強い組織を作るため、今はひとりになる」
「強いってなんだよ!弱いヤツが集まって何になる?大勢であの子供に負けたくせに!」
憧れだったのに。
世界一って言ってたくせに逃げるのか。
ロケット団とオレを置いて。
「行くな!」
オヤジはもう振り向かない。だんだんと背中が遠くなっていく。
「行くな…行かないで…!」
追いかけても追いかけても、距離は遠ざかるばかり。
そうしてやがて、見えなくなった。
交差点で立ち止まり、別の道を選んで進む。
オヤジの野望は潰えた。たったひとりの子供によって。
だからオレは、別のやり方で最強を証明してやるんだ。
そうして行く宛もないまま走り、やがて疲れ果て、膝に手をついてぜえぜえと荒い呼吸をしていると、大声で名前を呼ばれた。
「シルバー!やっと見つけた!」
顔を上げれば、晴れ渡る空の青、広い草原の緑。オレの視界の中心でヒビキがモンスターボールを構えて笑っている。
ここはどこだ?いつの間にこんなところまできたんだ?
「聞いてよ!ぼく、すごいわざ構成考えたんだ!だからいちばんにシルバーと戦いたくて!」
「フン、今日こそ勝ってやるよ」
ヒビキ、お前はいつだってそうだ。ヘラヘラしながら、いつも楽しそうにオレにつきまとう。
はじめはお前に負けるのが悔しくて憎くてたまらなかった。
昔のオレは勝つために手段を選ばず、人のポケモンを盗んでは強さだけを追い求めた。強いポケモンを集めれば勝てると信じていた。
だが、オレはお前にただの一度も勝てやしなかった。
オレの強さの証明を否定するように、何回もことごとく打ち負かしやがって。