第18章 決戦、看病、そして一夜
給湯室。ふたつの影。
「はじめようか」
「やりましょう」
目の前には買ってきた食料とパシオミント。
レトルトのおかゆは目が覚めてからあっためるとして、問題はパシオミントをどうやって飲ませるかだ。
万能薬のような効果がありつつ、その匂いはけっこう、いやかなり独特で、体調を崩している人が口にするのは難易度高めである。
「この間のようにフルーツサンドにはしないのかい?」
「うん、たぶん食欲ないだろうから、あったかい飲み物にしようかなって」
「わかった。美味しく健康になる解を共に見つけよう」
手始めにシンプルな数式からということで、カフェインレスの紅茶にミントの葉を入れてみる。刻んで乾燥させていたパシオミントを茶葉に混ぜてお湯を注いだ。
淹れたてのハーブティーを口に含めば、紅茶のほんのりとした苦さとパシオミント特有の清涼感とえぐみが混ざり、なんとも言えない味が口内を満たした。飲めなくはないけど飲みたくない、良薬口に苦し。そんな味。
「…これは」
Nはティーカップから口を離し、哀愁を漂わせた顔つきで遠くを見る。なにがそんなに悲しいのだろう。
「…ボクはこれを、彼に飲ませることはできない」
「…うん、やめようか」
ヒナギク博士やミモザ先生は、これを実際に飲んでいると聞いたから驚きだ。美と健康意識の高いふたりに敬意を表する。
Nって正直だから、こういう時はとっても心強い。裏表のない発言に従って、別の飲み方を模索することにした。
次はシンプルに、ミツハニーのはちみつとパシオミントをお湯で割ってみた。
「…これは!」
Nは今度はスプーンで味見をしている。さっきので警戒心が芽生えたのかもしれない。
「さっきより舌の拒絶反応が減った」
「私も、こっちの方がまだ飲めるかも」
渋さも苦さも、あまいみつでやわらかく包み込まれマイルドになった気がする。