第11章 お祭り騒動
「忘れろって…」
一瞬の出来事だったのに頭から離れない。思い出せば胸の奥が締め付けられる。
「…簡単に言うけど、無理だよ…」
言葉が喉で絡まって、それ以上なにも言い返せなくなってしまった。
互いに口を閉ざし、静寂が訪れる。
気まずい空気の中、ふとニューラの様子が気になり、シルバーくんの肩越しに見やると、素知らぬ顔で毛繕いをしている。
空気を読んで無関心を装っているのか、まるでこちらに興味がないのか。なんにせよ、私たちに干渉する気はないようだ。
しばらくして、シルバーくんが沈黙を破る。
「……さっきは、少し言いすぎた」
「私も…」
「送るから、お前はもう戻れよ」
シルバーくんが立ちあがろうとすると、ニューラは急にシルバーくんの膝に頭を乗せてくつろぎ始めた。
「ニューラ……お前…」
「まだシルバーくんとここにいたいんだね」
それなら先にひとりで戻ろうと席を立つと、ニューラに浴衣の袖を掴まれ、すとんと縁台に戻される。
「私もいろって?」
「今日はなんでこんなにわがままなんだか」
シルバーくんは眉をひそめて深々と嘆息する。けれど今は、ニューラのわがままのおかげで、ふたりの間に流れる空気が幾分か和らいだ気がした。
「ごめんねニューラ、待たせてるだろうからそろそろ戻らないと」
これ以上ふたりでいると、心がどうにかなってしまいそうだ。
「オレだって、本当は——」
シルバーくんがなにかを言いかけた刹那、突然の人の気配に声が止まる。
「ここいいわね!涼みましょ」
「そうだね」
夏祭り会場の方から3人組の人影が近づいてきた。
「おや?そこにいるのは…?」
Nの声だ。
近づいてくる3人に向かい手を振った。