第2章 三十日月2
「えっおもしろい?俺、面白い? ……よし! 俺と笑いの絶えない温かい家庭を作ろう!」
「もう!なんでそうなるのよ!!」
あきれた言葉を放ちつつも、朔は頬が緩むのを隠し切れない。
「ねえ! 君のこと教えてよ。何が好き? 俺はね甘いものとか結構好き。山を下りたところの集落にこぶし大の大福を売ってる茶屋があってね……」
結局その日も「じいちゃん」が迎えに来るまで一緒にいてしまった。
奇妙な逢瀬は次の日もその次の日も、またその次の日も続いた。
朔はいつも腹ペコで、善逸はいつも木に縛り付けられていた。
おきまりのような悲鳴から始まって、空が明るくなるまでずっと一緒にいた。
善逸が大げさに脚色した日常の話は尽きることなく、朔は時折そのあべこべさに呆れたり、茶々を入れたりしながらも賑やかで穏やかな時間を過ごした。
そして別れの挨拶とでもいうように、いつも朔を見つめて善逸は言う。
「もっと朔ちゃんと一緒にいたい!俺と結婚しよう!!」
その表情はいつもの怯えているものでも、でろんと溶けそうなものでもなく、真剣そのものだった。
その度に朔は、目をそらして答えた。
「……アンタ誰にでもそれ言ってるでしょ」
鬼と人間が結ばれることなどない。
そんなこと知りもしないだろう善逸は明るい声で追い打ちをかける。
「明日! また明日も会える?」
「気が向いたらね」
初めて会った時から変わらない言葉で再会の約束をする。