第3章 三十日月3
夜の雲が流れて、朝の紅がかった空が広がってきた。
もうすぐ夜が終わる。
「帰らなくていいの? 陽の光はまずいんじゃない?」
日の光は鬼を焼く。善逸の心配をよそに朔は歯を見せて笑った。
「まだまだ余裕よ。明るいとこでアンタの顔見たいし、アタシを見せてやりたいなって」
そうこうしているうちにも時間は過ぎた。
山が影のように黒くなり、隙間から光が差し込む。
光を浴びた草花はより鮮やかな色彩を魅せる。
鬼になってから初めて見る夜明けに心が弾むのを感じた。
横を見てもう一度感慨にふける。人間だった記憶はもうないが、好きな人と見る朝はその頃を含めても初めてだろう。
光の中にいる善逸をしげしげと観察する。
「話には聞いていたけど、本当に変な色の頭ね。まゆげ太っ。顔はかわいい系? もっとまぬけっぽいの想像してたわ。ちょっと前歯出てない?」
言いたい放題の朔に善逸は気を悪くするわけもなく微笑む。
「そんな俺は嫌い?」
「ううん、アンタがたとえミノムシだって好きなんだから」
「まだそれ言うかなー、もう忘れてよ」
クスクスと笑い合う。
背にした木の枝葉の隙間から、明るい陽射しが差し込む。
善逸は朔を影の方に引き寄せた。
「もう行かないと」
「鬼狩りが鬼を逃がしてどうするの? アタシが逃げないようにちゃんと捕まえててよ」
「えっ? だって君が……」
いつのまにか前髪が触れ合う距離にいた二人。
善逸の最後の言葉を朔は飲み込んだ。