第8章 ー天使の涙ー
会計を済ませるとコンビニの外でアイスの外装を剥いた。
「ほらよ」
ソーダ味のアイスのてっぺんを久遠の方へ向けて差し出す。
「ん?」
「ソーダ味も食ってみてぇって言ってただろ?」
「あ、うんー」
青峰が一口くれるという約束を果たしていることを知った久遠は嬉しそうに差し出されたアイスにかじりついた。
しかし、食べられたのは端っこのほんのちょっぴり。
それを見て、さすがの青峰も吹き出してしまった。
「お前、一口が小さすぎんだろ。こういう時はガッツリ食っちまえばいいんだよ!」
「だって、これ、青峰くんのアイスだもーん」
そう言いながら久遠も自分が持ってるアイスを青峰の方に差し出してきた。
もらったから自分のもあげる、といった単純なやり取りなのだろう。
なるほど自分が一口食べる側になるとどの程度食べるか考えさせられる。
しかし、先程『こういう時はガッツリ食う』という持論を展開したばかりの青峰に久遠みたいなお行儀のいい一齧りという選択肢はなかった。
バクリとかぶりつかれたアイスは1/6ほど一気に減った。
それを見た久遠は目も口もあんぐりと開けて、自分のアイスと青峰の顔を交互に何度も見やっていた。
かなりの衝撃を受けているようだが、青峰は
「一口やるって言われたらこうやって食うんだよ」
ニヤリとイタズラっぽく笑っていた。
「久遠のアイスなのにー?」
言葉尻にほんの少しだけ非難がましい色があるのは、きっとこのアイスに決めるまでの葛藤分の思い入れがあったからかもしれない。
「悪かったって。俺のもう一口やるから。今度はガッツリいけよ!」
そう言って再び差し出されたソーダアイスを久遠は意気込んでかぶりついた。
先程よりも少し大きいが青峰に取られた分には程遠いくらいにしか齧り取れていない。
それでも、久遠本人は『やったったー』みたいな満足そうな顔をしているのが更に笑えた。
「お前、マジで口、ちっせぇな。もっと食わねぇと元取れねぇぞ?」
もっと自分の手からアイスを食べる久遠を楽しみたくて差し出すが、久遠は首を振った。
「こっちのアイスも食べたいからいらなーい」
そう言って、自分のアイスを食べ始めた。
そして、どちらともなく帰路に向かって歩きはじめた。