第8章 ー天使の涙ー
しばらく歩くと先日の試合後の帰り道でメンバーたちで立ち寄ったコンビニに差し掛かった。
「あ、この前ここ来たねー」
あの時は青峰自身、自分の調子が良いことに高揚していた。
しかし今はそんなのは随分昔のことに感じた。
「…寄るか?」
それでもそんな提案をしたのはその時の久遠がとても楽しそうで嬉しそうで幸せそうだったからかもしれない。
「え、いいのー?あ、でも今日は学校の日だから赤司くんに怒られちゃうよー」
嬉しそうに返事をしたのにすぐに困った顔をする久遠。
その場にいない赤司の顔色まで窺う久遠に何故だがイラッとした青峰は舌打ちをする。
「別に赤司になんて言わなきゃわかんねーだろ」
「それってナイショってことー?」
「ナイショでもヒミツでもどっちだっていいんだよ。お前は行きてぇのか行きたくねぇのか、どっちだ?」
「んー…久遠はー…」
久遠は顎に手を当ててムムムと考え込んでいる。
コンビニに入るのにこんなに考え込んでいる人間は初めて見た青峰は久遠の中で結果が出るのを黙って見つめていた。
久遠はそんな青峰を仰ぎ見たかと思うと、ニパッと笑ってみせた。
「久遠、行くー!」
放課後、久遠と会ってからずっと仏頂面だった青峰であったが、その選択には片方だけ口角が上がった。
「よし、じゃあ行くか!」
二人で意気揚々とコンビニの自動ドアを潜った。
「青峰くんは何にするー?」
「俺のはもう決まってんだよ。それよりお前は何にするんだよ」
青峰は先日、コンビニに来た時のことを思い出した。
久遠は嬉しそうに店内をウロウロするばかりでなかなか買う物を決められず結局は何も買わずに帰ったのだ。
あんなに買食いする気満々だったのに、である。
コンビニから出て、青峰と黄瀬がアイスを食べている様を自分事のようにニコニコと嬉しそうに眺めて(黄瀬にアイスを一口もらって)久遠の初寄り道は終わった。
青峰からしてみたら、何しに来たんだコイツといった気持ちであった。
他人の買食いをあんなに嬉しそうに出来るんだから、いざ自分でしたら余程喜ぶのだろうな、とも思った。