第8章 ー天使の涙ー
青峰はその後も出る試合全てで圧巻の得点力を見せ、帝光中を快勝に導いていた。
久遠は毎回キラキラした目で青峰のプレーに見入り、キャッキャと声援を送った。
試合が終了してもスコアブックを眺め、試合内容を頭の中で振り返ってはご機嫌にクルクル回っていた。
そんな久遠は気づかなかった。
試合後の相手チームがどんな顔をしているかを。
それを見て、青峰がどんな表情をしているのかを。
その後、全中予選の初戦を軽々突破した後から、しばしば青峰が部活をサボるようになっていった。
主将である赤司のところにはもちろん、幼馴染である桃井にも何の情報も入っていなかった。
厳しく注意を受けても頻度は増えるばかりだったそんなある日。
今日も部活に足が向かず、昇降口で靴を履き替えた青峰は下校しようと踏み出した時だった。
目の前にふにゃふにゃの笑顔があった。
「あ、青峰くん、来たー」
「げ…」
何故だか今一番会いたくない人物だった。
どんな反応をしていいものかわからなかった青峰は久遠のことは見なかったふりをしてその横を通り過ぎた。
しかし、そんなこと気にした様子もなく久遠は青峰の隣を歩き出した。
「なんだよ、天野。お前も部活に来いって説教しに来たのかよ」
「え?お説教ー?」
「それ以外考えらんねーだろ」
「久遠ねー、青峰くんって部活してない時は何してるのかなーって思ったのー」
「んだそれ?そんなことより部活に行けよ」
どの口が言っているのかという感じだが、久遠は自分と同じくらいバスケが好きなんだからサボったりせず大人しく部活に行けばいいと思った。
「んー、今日は青峰くんと帰るー」
ニコニコ笑いながら久遠にこれ以上何を言っても無駄なように感じて青峰は舌打ちをして歩き始めた。
しばらくは何も話もせず黙々と歩いた。
小さい久遠は青峰の少し後ろを鼻歌を歌いながらついてくる。
「お前、どこまでついてくるんだよ?」
「青峰くんって部活しない時は何してるのー?」
質問したはずなのに関係ない質問で返される。
全く会話が成立しない。
赤司はよくこんなヤツと毎日帰れるなとすら思った。
久遠を置いて帰ることなどいくらでも可能ではあるが、久遠相手ではそれも憚られ青峰は深くため息をついた。