第8章 ー天使の涙ー
定期テストの返却も終わり、テスト期間のソワソワとした雰囲気もすっかり落ち着いた頃。
いつも通りに戻ったバスケ部の練習後に集合の号令がかかった。
全中まで二ヶ月を切った時期となり、チームとして仕上げていくため白金監督が指揮を取ることが告げられた。
二年生から参加組は初対面であったため、白金は初対面のメンバー一人ひとりに目線を配りながら改めて自己紹介をした。
それはマネージャーとして集合場所にはいない久遠も例外ではないらしく、白金はしっかり久遠の方を見てくれた。
いつも目を細めて柔和な表情の白金であったが、久遠を見た瞬間だけさらに表情が和らいだように見えた。
久遠は一瞬のことであったため笑顔を返すことができなかった。
そして、それができなかったのは違うことに気を取られていたからでもあった。
白金からの自己紹介兼部員たちへの檄が終わると、今度は赤司が呼ばれ、白金の横に部員たちと向かい合う形で前に出た。
現主将・虹村に代わり、今後は赤司が主将としてチームをまとめていくといった内容だった。
部員たちは驚き、ざわめいているようだったが久遠はそんなことはなかった。
それは数日前に赤司から「近いうちに新しい体制になる」程度の話を聞いてはいたし、赤司はいずれ主将になるだろうと思ってもいた。
それがだいぶ早い形で進んだということだけだったので、久遠は笑顔で拍手して喜んでいた。
部活終了後、緑間は赤司に声をかけた。
「いつから決まっていたんだ?」
唐突で主語がなくても何が聞きたいか理解している赤司は当たり前のように答える。
「俺に話が来たのはテスト後、部活が再開してからだ。虹村さんとコーチの間ではそれより前に話はされていたようだけどね」
「では、虹村さんも納得の上というわけか?」
「あぁ。もういいか?天野を待たせているんだ」
定期テストが終わってからというもの、ほぼ毎日赤司は久遠と下校していた。
別学区から通っている久遠の家は他メンバーとも、もちろん赤司とも家の方向は違うというのに、だ。