第3章 雪と事件
『ハルさんと、どんな関係なの?』
タバコを一つ取り出して、火をつけた。
頭の切れる少年に言われたことを思い出す。
『ハルさんのこと、気にかけてるよね』
あぁ、もちろん、ずっと気にかけている。
初めて会った日のことは、まだ鮮明に覚えている。
夏の終わり、部屋に帰るとドアの前でしゃがみ込む彼女がいた。頬は痩せこけていて、信じられないくらい軽かった。
『外にいたら、誰でもいいから助けてくれると思った。』
見つけたのが私じゃなかったらどんな目にあっていたかも分からないのに。誰でもいい誰かに助けを求めるほど、それくらい彼女は追い詰められていた。
それからご飯を分け与え、外に連れ出し話を聞いた。
野良猫を拾ってきたような生活だった。
私もよくやったものだ。
どうでもいい隣人なら、あそこまでできなかった。
ただ、どうしても放っておけない理由が、他にあったんだ。
それは。
「昴さん。」
その声に振り返る。
「あれ、ハルさん。どうしてここに?」
「私も一本吸いたくて。」
そう言って彼女はポケットからタバコを取り出して
一本咥えてニコッと笑った。
「あれ、ハルさんって、吸ってましたっけ」
喫煙スペースの壁によっかかりながら
彼女は火をつけた。
「ずっと吸ってますよ。
好きな人が、吸ってたから。」
そう言って煙を吐いた彼女はどこか遠くを見つめていた。寒さで赤くなった頬と鼻。好きな人と言ったその人を思い浮かべている横顔。
「…3年前の?」
「ええ。昴さんの前で吸うのは初めてかも」
新情報ですね。
なんて言って彼女は煙を吐き出した。
本当に、底が見えない子だ。
ここ数年一緒に過ごして、まだこの子のことがよくわからない。
「雪の中で吸うタバコは美味しいですね」
そう言って気持ちよさそうに深呼吸をした彼女に一つ頷いた。
…見つけた。
そんな中、喫煙所に佇む二人を遠目から見ている男がいることに、彼女は全くきづかなかった。