第3章 雪と事件
「初めまして、沖矢昴と申します。彼女を今回の旅行に誘った者です」
「…そうでしたか、沖矢さん。失礼いたしました」
降谷さんは丁寧に頭を下げ、爽やかに微笑んだ。
「せっかくの旅行ですから、ぜひゆっくり楽しんでいただきたいのですが……」
降谷さんが不穏な面持ちで窓の外へ視線を向ける。
打ちつける雪の音が、激しさを増していた。
「実はこの大雪で、麓からの道路が完全に崩落してしまったらしくて」
「えぇっ!? じゃあ、警察も来られないのか!?」
毛利さんが声を上げる。
「ええ。先ほど固定電話も不通になりました。完全に陸の孤島状態です」
降谷さんの落ち着いた報告に、ペンション内に不安が広がる。
「事件が起きたというのに、警察が来られないなんて……」
怯える私に、降谷さんがふっと柔らかい視線を送ってきた。
「大丈夫ですよ。毛利先生もいらっしゃいますし……僕たちスタッフも、全力で皆さんをお守りしますから」
大勢に向けられたはずのその言葉。
でも、彼の目はまっすぐに私を見つめていた。
『逃げられると思うな』と言われているような気がして、私はゴクリ…と生唾を飲み込んだ。