第2章 ポアロ
昴さんと談笑しながら
梓ちゃんが出してくれたハムサンドを
パクパク食べ進めた。
これは確か降谷…じゃなくて、安室さんが作った新メニュー。
やっぱりなんでもできる人だ、
無断欠勤、ドタキャンをたくさんする代わり
喫茶ポアロへの貢献も怠らない。
私のことも穴埋め要因としてよくこき使う。
そんな風に彼のことを思ってもハムサンドは悔しいくらい美味しかった。
「実は今度、近所の子供達と一緒にスキーに行くんです」
「そうなんですか!いいな〜私も最近全然言ってないなぁ」
「それでよかったらハルに保護者としてついてきて欲しいんです。もう一人の保護者役の方がぎっくり腰になってしまって。」
「え!そうなんですか!シフトが被ってなかったらぜひ行かせていただきたいんですけど…」
………でも、
不自然に間が開いてしまう。
「同居人が、許してくれるかどうか、はは」
監視の目が行き届かない場所に行かせてくれるかどうか。
「同居人、さんの許可が必要なんですか?」
「あ!いえ、その…まぁ色々あってあんまり自由に移動はできなくて。でも、行けたら連絡しますね!」
「……」
少し怪しまれてしまったかもしれない、と慌てて誤魔化すように笑った。
どうせGPSかなんかはつけられているんだろうけど
遠出はあまり現実的ではないかも。
そう思ってフッと窓の外に目を映した。
「え、…」
目に映ったのは、よく知ってる彼の姿。
あの金髪、あの体格、あの横顔。
あんなに遠くにいても、見つけてしまう自分を恨んだ。
私に向けたことないような笑顔で
女の人と歩く彼の姿があった。
「ハルさん?」
「あ、はい!いえ、あの、すいません」
「どうされました?」
明らかに動揺しているのを昴さんに察される。
「あ、私用事思い出しちゃって、帰らなくちゃ、
バタバタしてすいません。あの失礼します」
私はなぜかそこにいられなくなって
急いでポアロを飛び出した。
彼が歩いて行ったのと逆方向にひたすら歩いた。
冬の空気が、私の鼻を冷たくした。