第1章 君の中に墜ちる
長い長い沈黙が私をより一層不安にさせる。顔を上げることが出来ない。だけどその長い沈黙を破ったのは大倶利伽羅だった。
「……あんたは懲りないな」
何を言われるかと身構えていたら、ふいに落ちてきた声は穏やかで、優しさを纏った音色だった。
聞き取れるぎりぎりの声量で呟くように告げられた言葉。その柔らかさが思いがけず、顔を上げると褐色の手が伸ばされそっと抱き寄せられる。
「っ、大倶利伽羅……?」
驚いて一瞬体が強張ってしまったけど、戸惑いながらも大倶利伽羅の背中に手を伸ばそうとすると、すぐ傍から大倶利伽羅の、何かに耐えるような苦し気な吐息が聞こえてきて、背中に回しかけた手を止めた。
「あんたは…人と共に生きた方が良いと、幸せになれると思っていた」
「……」
人間は人間同士一緒にいる方が幸せだと、そう言いたいのか。
違う、と口を開きかけたけどすぐ傍に映った大倶利伽羅が思い詰めたような、切ないような、そんな表情をしていたから…口に出しかけた言葉を飲み込んだ。
「刀であり、物である俺は子を成せないし、あんたに何も残してやれない」
「…っ」
「人は…子を残して、命を繋いでいくものだろう……だからあんたに見合い話がきたとき、これでいい、と…そう思った」
その言葉を聞いてまた涙が溢れた。