第1章 君の中に墜ちる
ゆらりと大太刀の重く大きい刀が弧を描き、私に向かって振り落とされるのがスローモーションのように見える。逃げなければいけないのに、蛇に睨まれたカエルの如く動けない…
体は動けないのに、頭の中では今までの皆と過ごした本丸での記憶の断片が、走馬灯のように駆け巡っていた。
短刀達と飽きるほど隠れ鬼をした日々
暑い夏に皆でスイカ割りをした思い出
初めて雪が積もって庭に大きいかまくらを作った日
大倶利伽羅に抱かれたあの夜
不意にみせる大倶利伽羅の優しい表情
「あるじ!!危ないッ!」
不動の鋭い叫び声でハッと現実に引き戻される。
次の瞬間不動が地面を蹴るように飛び出し、その小さな刀で大太刀の一撃を食い止めた。
顔を歪ませる不動。その一撃はあまりにも重く力の差が歴然だということが見て取れる。その場で尻餅をついた私は恐怖で大太刀から目を離せないまま、ずりずりと後退することしか出来ない。
確か大太刀は2体いたはずだ。
1体は不動が目の前で交戦しているが、もう一体は…?
恐る恐る辺りを見回すと、後ろから地鳴りのような唸り声が聞こえた…
後ろに、いる…
絶体絶命…!その4文字が頭を過ぎり、周りは轟音でうるさいはずなのに、静寂の中大太刀の唸り声がやたらとはっきり聞こえる錯覚に陥った。