第1章 君の中に墜ちる
やむを得ず抱かれたから、肌を重ねたから私は大倶利伽羅のことを好きになったと思い込んでいる、勘違いしている、と言いたいのか…
否定しようと口を開きかけたとき、大倶利伽羅は更に言葉を続けた。
「あの夜…」
「…」
「あんたは俺に薬の話を持ちかけた。俺があんたを抱くことを忘れて欲しかった、そういうことだろう。…俺ではなく、他でもないあんたが俺とのことをなかったことにしたかった。それが全てだ…」
「…っ!」
違う…あの晩私が記憶を失う薬の話を大倶利伽羅に持ちかけたのは大倶利伽羅を思っての事だ。
確かに大倶利伽羅の事はそれまで何とも思っていなかったし、抱かれることに抵抗があったけど、あの夜の事がなければこんな気持ちにはならなかったのかもしれないけど、でも、でも…この気持ちは勘違いなんかではない。
私は大倶利伽羅が好きだ。
「っ、…」
そう言いたいのに、声を上げたいのに、大倶利伽羅に否定されたことが悲しくて、ショックで、喉に何かが張り付いたように声が出ない。
縋るように大倶利伽羅を見るけど、大倶利伽羅が分かってくれるはずもなくて…
違う、と首を振ったところで突然閃光と轟音が辺りに鳴り響いた。大倶利伽羅が咄嗟に私を守るように抱き寄せる。
驚いて彼の腕の中で空を見上げると、さっきまであんなに青く澄んでいた空がそれとは一変して、どんよりとした禍々しい空気に覆われていた。