第1章 君の中に墜ちる
「ねえ御手杵…」
「ん?なんだ、あんず?」
「ちょっと私の手、握ってみてくれない?」
「はあ!?」
「ね、いいからちょっとだけっ」
私が片手を差し出すと、御手杵はいぶかしげな表情をしながらも手に持っている残りのおにぎりを口に押し込んで、私の手を握手するように握った。
そのままブンブンと勢いよく振り回され私は慌てて口を開く。
「そうじゃなくてっ!両方の手でそっと包み込むように!優しくっ」
「なんだそりゃ、おかしなやつだなあ…こうかあ?」
小言を言いながらも素直な彼は、言われた通りに振り回していた手を止めてから、両の手で私の片手を包み込んだ。御手杵の大きな手はすっぽりと私の手を覆ってしまう。
いつも重いと言いながら槍を振るっているその手は、想像よりもずっと皮膚が分厚く硬かった。私が覚えている手も男の人の手って感じでゴツゴツしていて…御手杵のそれとはそんなに大差ないのかも知れないけど…
でも…――
「やっぱり違う…この手じゃない」
「はあ?」
「ごめんねっありがとう!」
訳がわからないというような表情を浮かべている御手杵。だけど私の頭の中は最早それどころではなかった。
やっぱり…あの手は、大倶利伽羅だ…!
そう思ったときには厨を飛び出し走り出していた。