第1章 君の中に墜ちる
私は彼に面倒をかけてばかりだ…
「もう、大丈夫です…ありがとうございました」
「本当に大丈夫なんだな」
こくりと頷くと、大倶利伽羅は少し安堵したような表情をみせ「後で薬研に見て貰え」と言いながら、私の冷たくなった左手を両の手で包み込んだ。
その途端ドクンと心臓が音を立てて、包み込まれた手からじんわり熱が広がっていく。そして急にフラッシュバックされるあの夢。
『大丈夫だ…』
夢の中で何度も聞いたあの声。
そしてこの感覚とこの感触を私は知っている…?
同じだ…
うなされていた時、いつも私の手を温かく包み込んでくれた手と同じ。
夢だと思っていたけど、あれは現実だったの?
確信はないけど、今まさにあの時と同じように包んでくれているその大きな手に私は覚えがあった。
――手を握ってくれていたのは大倶利伽羅なの?
そう口を開きかけたとき、厨の引戸が勢いよく開かれた。御手杵があくびをしながら「腹減った-」と言いズカズカと入ってくる。
弾かれたように手を離し、大倶利伽羅は無言で厨を去って行った。
「なああんず、なんか食うもんねえかあ?」
「あ、うんっ、そこに歌仙が作ってくれた練り切り置いてあるけど食べる?」
「練り切りか~もっと腹に溜るもんねえかなあ?」