第1章 君の中に墜ちる
「っ、あつッ……ッ!!」
手元が疎かになっていたことに気付かず、湯呑を支えている手に熱湯が見事にかかった。
お湯がかかった左手の薬指を抑えていると、にゅっと伸びてきた褐色の手に腕を引っ張られ、蛇口から勢いよく出された水に患部を当てられた。
流水によって患部が冷やされ、じんじんしていた痛みが徐々に引いていく。
「…ごめんなさい」
「気をつけろ」
大倶利伽羅に手を握られている。
握っている大倶利伽羅の手も握られている私の手も、一緒に流水に晒されていて冷たいはずなのに、なんだか触れている部分が熱を持っているみたいに熱い。
大倶利伽羅が直ぐに冷やしてくれたお陰で患部はもうそれ程痛くはなかった。だけど、もう大丈夫って言ってしまえば大倶利伽羅とのこの時間が終わってしまう。
それが嫌で、寂しくて、この時間が続いて欲しくて何も言えずにいるずるい私…
排水口に流れていく水の音だけが聞こえて、なんだか時が止まったように思えて…だけど相変わらず心臓だけは大倶利伽羅に聞こえるんじゃないかってくらい早鐘を打っている。
そんな中、大倶利伽羅が蛇口を捻り水を止めた。
「あ、ありがとう…」
大倶利伽羅は少し赤くなっている人差し指を見て、呆れたように溜息をついた。