第1章 君の中に墜ちる
急に縮まった距離に動揺し、抱き締められたまま謝り大倶利伽羅を見上げると、少し長い前髪の隙間から金の瞳が私を見つめていた。普段にはない至近距離で見つめられて、また私の心臓が先とは違う種類の大きな音を立てる。
顔が近い…
息が止まる…
あの夜の出来事が彷彿される…
駄目だ…離れなきゃいけないのに足が動かない…
瞬きも忘れ硬直していたところに急に風が強く吹いた。木々の葉が風で揺れザアーッと音を立てる。
我に返り大倶利伽羅の胸に両手を当て咄嗟に身を引こうとすると、大倶利伽羅は微かに眉を寄せ無言で私を放し背を向けた。
そしてそのまま先ほどまで座っていた縁側に腰掛ける。
煩く脈打つ心臓を落ち着かせるように小さく息を吐き、その背中を見つめていたら大倶利伽羅の口から発せられた言葉は意外なものだった。
「見合い相手とうまくいっていないのか」
まさかそんな事を聞かれるなんて思ってもいなかったので思わず目が点になる。
大倶利伽羅はこちらを見ることなくその瞳は真っ直ぐに暗がりの庭へと向けられている。
今度は大倶利伽羅の横に私も腰を落ち着かせた。
「あの…相手の審神者さん、私には勿体ないくらいに優しくていい人なんです」
「…」