第1章 君の中に墜ちる
「え、ちょっとっ」
「もうやめておけ」
「何でっ、」
「十分飲んだだろう、早く寝ろ。何時だと思っている」
「っ、だって………、眠れない…」
独り言のように小さく呟くと、大倶利伽羅は怪訝な顔をしながらも私の横に腰を下ろした。
いつもならさっさといなくなるのにどうして忘れようとしている時に限って…?
大倶利伽羅がそこにいるなら私が離れればいいと思い立ち上がった途端、視界がぐらりと揺れた。自分が思っていたより酔いが回っていたようだ。
だから大倶利伽羅はもうやめろと私からお酒を奪ったのか、と今頃になり気付いたところで後の祭りだ。
倒れてはいけないと咄嗟に踏ん張った右足は、かかとの部分だけが縁側の板敷を微かに踏んだだけだった。ぐらりと宙を舞うような、空中に投げ出されるようなおかしな浮遊感…
庭の方に落ちる…!
心臓がドクンと嫌な音を立て、ギュッと目を瞑ると肩を掴まれ大倶利伽羅の方へと引き寄せられた。
咄嗟に助けてくれたからか力加減がやや強く、大倶利伽羅の懐に勢いよく飛び込むような形になってしまっている。
更に大倶利伽羅は落とさないように、守るように私をぎゅうと抱き竦めた。
「ご、ごめんなさいっ」