第1章 君の中に墜ちる
きっとこの想いは彼がいる限りなくなりはしない。
かといって助けて貰ったというのにこの本丸を去るわけにもいかない…
いつか時間が、大倶利伽羅を忘れさせてくれる日が来るのだろうか…
「何をしている」
「ひぎゃあっ!」
手元のお酒があと少しというところまで減り、酔いが大分回ってきた頃、急に背後から聞こえた低い声に大袈裟なほどに悲鳴を上げてしまった。
縁側に座っている体はそのままに、首だけで振り返ると暗闇に金の双眸が浮かんでいる。
「な、なっ、なんでいっつも急に話しかけるんですかっ」
「…知らん、あんたが鈍いだけだろう」
「にしてもこんな夜中に足音もなく近付かないで下さいっ」
前にもこんなことがあったな、と思いながら少し零れてしまったお酒を急いでフキンで拭った。
会いたくない時に限ってどうして現れるんだろう。思わず苦笑いが零れる。
「本当に吃驚しましたっ、それに何をしているって見ればわかるでしょう?お酒、お酒飲んでいたんですっ」
「こんな時間に灯りもつけずにか」
「灯りがなくても月明かりで十分明るいし…ていうか大倶利伽羅には関係ないです、から…」
「…」
早く立ち去って欲しくて悪態をつきながら残っているお酒を飲もうとした時、ひょいっとお猪口を取り上げられた。