第1章 君の中に墜ちる
「飲みたいの?」
「え!いやいやいやっ!俺が飲みたい訳じゃなくて!」
「あははっ、わかってるよ?冗談だってば。でも…今日はやめておく。…色々と気遣ってくれてありがとう…不動」
私室まで送ってくれた不動と別れてから、お風呂に入って布団の中に入り目を閉じていても眠気は一向にやってこない。
時間だけが刻々と過ぎていく中、こんなことなら不動にお酒を付き合ってもらえば良かったかなぁ、なんて考えながら暫く布団の中で大人しくしていたけど、やっぱり眠れないので厨へと足を運んだ。
丑の刻近くとっぷりと夜更けた本丸は、ひそりと静まり返っている。
厨からお酒を拝借して、不動の言葉を思い出しながらまた大倶利伽羅が座っていた縁側に腰を下ろし、月明かりだけでお酒を何度も口に含む。
やっぱりこのまま岡田さんと結婚するのは相手に対して失礼じゃないのか…
何度か会って、彼の事を沢山知ることが出来れば好きになれるかも知れない、そう思っていたのに、心はどこまでも正直で会えば会うほど大倶利伽羅への想いを認識させられるばかりで苦しいだけだった。
大倶利伽羅の姿を見る度に胸が痛いくらいに締め付けられる。忘れようと努力してるのに、気付けば目が彼を追ってしまっている。